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寄生虫よもやま話   

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エッセー教室の先輩が、今回はくさい話ですが御免こうむりますと「厠のはなし」を書かれ、とても愉快で面白く読ませてもらった。
私も今回は、顔をそむける方もおられるかも知れぬので最初に御免被らせてください。

先輩のお話は、軍隊の時の話で、広東の宿舎では池の上に、それがあり、粗末な板を渡って池の真ん中で用を足すと、魚が群がり落下物を争って食べていた、
夕食によく魚のから揚げがでたのもひょっとすると、という話や、ビルマでは、高床式で、またぎ式の中には黒豚がおり、音で何頭かが集まってきて口を開けていて、その豚が軍隊では食欲を満たしてくれたという話なのであった。
私はこの時、現代でもそのような環境で生活をしている発展途上国の人々にまつわる話をふと思い出したのである。

最近、「世界一受けたい授業」のテレビ番組にも時々出ておられるのでかなり、ご存知の方も多いかもしれない。
東京医科歯科大学教授の藤田紘一郎先生の研究の得意とするお話である。
先生は、ある時、インドネシアのカリマンタン島の調査に携わり、子供たちが排泄物の流れている川で水遊びをしているのを見て、子供たちの肌はツルツルし、アトピーや喘息がない、花粉症がない、住民の殆ど全員が回虫などの寄生虫をもっていることから以後の研究テーマになったそうである。
日本でも戦後、私も覚えのあることであるが、子供が回虫を持っているのは珍しいことではなかった。サントニンという薬で駆除させられ、しばらくはあたりが黄色く見えたものだった。
そのかわり野山を駆け回り、毎日杉木立の中を歩きまわっても、花粉症と言う病気すら聞いた事がなかったのであった。

ここで、もう何十年も前の話で時効であろうからバラしてしまうが、当時のインドの首相が健康診断のため来院された、寄生虫を3種類持っておられた、さすがに一人から3種類というのは私も始めての経験だった。
 
藤田先生は、回虫や寄生虫がアレルギーを抑えていると確信するに至り、今日では、その寄生虫の排泄管からアレルギーを抑える物質を分離、精製することに成功している。
遺伝子組み換えの末、アレルギーの特効薬にもなり、外国でも注目されたが、免疫のバランスを崩しガンにかかりやすくすることがわかり、実用には至っていない。この研究は、学会からは認められず陽が当たってはいないのである。

 確かに、公害、排ガス、食品添加物がアレルギーを引き起こす原因として取りざたされたが、
公害、環境汚染は軽減された報告は聞くが、アレルギー症は減少どころか増加傾向の話しか聞かない。回虫だけの話ではない、、ウイルスや細菌との関係も同じである。

 先生は「清潔はビヨーキだ」という本も出版されている。下着、ボールペン、車のハンドル、私たちの回りは抗菌グッズに覆われている。本来私たちを守っている細菌までがやっつけられ、地球が誕生してから上手く共存してきた細菌までも排除してしまっている。
逆に抗菌物質の銀イオンなどの化学物質で地球を汚染しているのである。子供の免疫力は落ちている、きれい社会が子供をアレルギー体質にしている。外国では子供に泥んこ遊びを奨励しているのをご存知ですか。
バイキンが子供を強くするのです。自然に触れ合って生活することが免疫力を高めるのです。

おまけの話を一つ、ダイエットに寄生虫ダイエットというのがある。藤田先生は、自分のお腹にサナダムシを飼っている。
今はナオミちゃんと名づけ、私が先生の研究のお話を聞いたときにはキヨミちゃんだったから、かなり長い。先生はダイエットの為ではない、共存目的である。
この寄生虫ダイエットは、声楽家のマリアカラスが100キロを越える体重を半分に落としたので有名である。彼女の美貌と美声は実は サナダムシのお陰だったのです。
サナダムシはインターネットでも販売しており、カプセル様になっており手に入れることは可能である。
しかし、マリアカラスが用いたのは広節列島条虫といい、外国製で効果はあるが、副作用が強い。日本のは、日本海列島条虫といい、副作用が弱いが、効果も薄いのである。

 ごく最近、勤務していた病院で若い女性が、お尻から紐みたいなものが出てきて気持ち悪いと受診に来た。検査の結果間違いなく日本海列島条虫であり、どうゃら前述の話を実践したようであった。       おしまい。

           参考:藤田紘一郎著 「笑う回虫」 「空を飛ぶ寄生虫」

 〔写真提供 阪田 かずを氏「花に生きる」〕

by taizann | 2005-06-24 20:49 | エッセー

無言館の画学生たち   

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本来ならば、今頃は「冥土へ行く前に冥土を見る」といわれる程の美しい中国の世界遺産の九寨溝に行っている筈だったのです。それが例の反日デモの影響をまともに受け、中国への旅は延期となったのでした。
急遽、前から、一度は訪れてみたいと思っていた信州上田にある、慰霊美術館の無言館へ行こうと友人と話がまとまったのです。
 
それは、長野県上田市に戦没画学生慰霊美術館「無言館」として1997年に開館されました。
洋画家で東京芸術大学名誉教授の野見山狂暁治さんと信濃デッサン館館主の窪島誠一郎さんが全国の戦没画学生の遺族を訪ね、寄託されたものを展示する小さな美術館です。
そしてその建設資金は、全国約3800名の篤志家から4千万円余の支援金が寄せられたそうです。
 
上田市の塩田平の丘陵地帯に、木々の深い緑に囲まれ、山王山の小高い頂に、無言館はひっそりと建っていました。 一歩中に入ると、コンクリートだけで囲まれた展示室には、太平洋戦争や、日中戦争で亡くなった東京美術学校の画学生、卒業生42人の遺作85点余と彼らが愛用したイーゼル、画材、家族、友人へ宛てた書簡なども収録、中には、死亡通知書なども展示され、色褪せ、痛みも激しく、長い風雪を感じる遺品ばかりです。
 
その絵が上手いものか、絵画に疎い私にはわからないのですが、確かに完成していない、純粋に絵が好きで、描くことが好きだった若者の未完成な絵がありました。
 突然、絵筆を銃に持ち替え、愛する家族、愛する故郷を置いて、二度と戻らなかった短い人生が一枚一枚の絵にはエピソードとして残っていました。
彼らは、誰かにほめてもらいたいとか、コンクールに出して賞を取ろうとか考えて描いたのではなかったでしょう、絵を描くことが好きだったのです。戦争に行かねばならなかったその瞬間まで描き続けていたのでした。
 
蜂谷清さんは、戦争に行ったら、もう大好きだったおばあちゃんを描くことはできないと皺の一本一本まで「おばあちゃん」を描き残して行きました。
 
太田章さんは、庭木の横にしゃがんだ浴衣姿のおさげの妹さんの絵を残しています。
兄を見つめる妹の瞳がまるで仲の良かったこれまでを物語っているようです。

 曾宮俊一さんは「風景」、俊一さんの父は晩年になるまで息子の戦死のことは口にしなかったといいます。目が見えなくなり、90歳を過ぎた頃、一言だけ「悔しい」と。 

 家族にとってどれほど尊い存在だったかどれほど大事な絵であったか、を思うと字が霞んできて読めなくなるのです。

 彼らは、今我々が失いつつある家族、兄弟、友人との絆の尊さを教えています。

 画家の野見山氏は、戦地で亡くなった画友たちにささげる熱い鎮魂の思いが出発になった、そして、 戦死した仲間たちの絵が一堂に勢ぞろいしたら、不思議な光を放つに違いない、声が聞こえるに違いないと言われました。
 
 窪島氏は、遺族の前に立ち、画学生の遺作の前に立つたびに、それまで置き去りにしてきた「自分の戦後」と真正面から向き合うことを余儀なくされたと言います。画学生たちの合唱は彼らたちだけの声ではなく、戦後を生きた遺族それぞれの呻吟であっただろうとも言っておられます。

 彼らの絵は何も言いません。戦争に行きたくないとも、反対とも、死にたくないとも。
 
 でも彼らの絵の前に、私と友人は、時代の理不尽さを思い知り、言葉なく無言館を後にしたのでした。

参考:窪島誠一郎「無言館」の坂道
            無言館の詩
 
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by taizann | 2005-06-13 13:49 | エッセー

(続)FT革命が人類を救う   

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写真 阪田かずを氏 写真集
 我々は古代より、微生物に取り囲まれて生きてきました。人間の体には一兆億個の微生物がいるのです。わきの下の切手一枚分のなかには二百万個の微生物がいます。
そのミクロの微生物に守られ、その微生物がなかったら生きていけないと言っても決して過言ではありません。 

 「発酵技術が人類を救う」、その発酵とはどのようなものでしょうか。一口に言うと微生物が人間にとって有益に働く現象なのです。その逆は、有害に働く、腐敗、罹病があります。
発酵と腐敗は微生物の良く似た現象ですが、腐敗は食べ物が腐ることで牛乳や肉を放置して置くと大腸菌やサスモネラ菌などに汚染され、腐敗菌の毒性物質が発生し、それを食べると中毒症状が起こり、人に有害なことで、発酵とは言いません。
ところが、牛乳の中に発酵菌の乳酸菌を入れ、数日間放置しておくとヨーグルトやチーズになり美味しい栄養食品になります。これが発酵と呼ばれるものです。これら発酵菌には、納豆菌、乳酸菌、有用な酵母、麹菌などがあります。

 では発酵技術は、人類に課せられた問題の解決にどう利用すると言うのでしょう。

 環境問題では、すでに微生物が排水を浄化し、川や海は美しさを取り戻しています。
しかし、生ゴミの処理は、現在各市町村で実施されている焼却方法では、問題は大きくなるばかりです。発想の転換から「生ゴミは宝だ」「生ゴミは資源だ」との考え方がFT革命です。
生ゴミのリサイクル、すなわち焼却するのではなく、土に戻し、発酵させ、肥沃な土を作り、農業に活かす、環境を破壊せず、いい作物を育てるという従来よりも安全で安値な方法なのです。  作物のまわりや土の上に、堆肥を置いたりまいたりすると言う有機農業の誤解を解く必要もありそうです。これまで何十年も間、化学肥料や農薬に痛んだ土地は少しの堆肥をまいても効果はなく、土を30~40cm深く掘りそっくり、堆肥と入れ替えるのです。
こうすることにより作物は根毛が繁り、堆肥中の栄養成分、ミネラルを吸収し作物本来の旨みが出るのです。この生ゴミを資源として利用する、地域経済循環システムはリサイクルとしていくつかの自治体が採用し成果を発揮しています。

 健康問題では、微生物の持つ拮抗作用(細菌は共存が出来ない一つだけが生き残る現象)を利用し、抗生物質が生まれましたが、ペニシリンの発見以来、現在までに四千種以上の抗生物質が発見され、そのうちの百種類が発酵生産され実用化されています。微生物の作る薬は、抗ガン剤、抗ウイルス剤など、また健康食品、発酵食品の分野でも益々注目されています。

 食糧問題の解決には、微生物を食べることです。あんな小さな目に見えないものを? 実はキノコなのです。キノコの本体は胞子という微生物なのです。椎茸、サルノコシカケ、アガリクス、メシマコブなどの抗ガン作用も注目され、菌体そのものの蛋白質の研究もされています。地面に落ちている枯葉からも人間に必須のブドウ糖の抽出も微生物が関わり、今、研究が進められています。

 さて、エネルギー問題は、微生物は発酵によって爆発力の強い物質まで作るエネルギーを持っています。
グリセリンは、微生物で発酵生産する方法が戦争とともに発展し、ダイナマイト用に殺戮に使われたことは皮肉なことでした。しかし、発酵燃料生産の研究は、炭化水素を出す菌のDNAを取り出し、これを細菌や酵母に組み込み石油類似物質の生産も夢ではないところまで来ています。

 如何でしたでしょうか。発酵技術の力は偉大だと思いませんか。

                                                      参考:FT革命{発酵技術が人類を救う} 小泉 武夫著

by taizann | 2005-06-03 11:16 | エッセー