天国に行った徳さんへ   

                                 
 徳さん、お久しぶりです、どうしていますか?退屈していませんか?
貴女のことだから、きっとそちらでもたくさん友達作って賑やかにふるまっているのでしょうね。私は、たまに貴女のことを思い出すけど、私のこと覚えている?

そう、もう12年も前になりますね。私が肺の手術をして、続いて貴女まで同じ手術をする事になるなんて。同じ検査技師がねえ。

貴女は血液検査のプロだったけど、私はずっと細菌検査をしていたから、しかもツベルクリンが強陽性だったし、ちょうどその頃、貴女は知っていると思うけど結核菌検査は時間がかかるでしょう、それを早く結果を出すように、いろいろ研究していてね、多分仕事上の感染と決め付けて、自分の病院には 結核病棟がないから、貴女の病院に行ったんです。
でも、タバコも吸っていたし、気管支鏡の検査でも、細胞が取れず手術になったという訳です。

手術後仕事が終って、毎日見舞いに来ていた主人と病院のロビーで話しているとき、いつも我々を見ている人がいてね、「あの人たぶんここの病院の検査室の人だけど・・用事があるのかなあ」と思っていたんです。声をかけてくれたらよかったのに。

その後、そちらに勤めている、ほらあの貴女の同僚のYさんからね「徳さんが貴女の手術の後の傷を見せてほしいって言っていると聞かされたのでした。傷を見せたら「きれいな傷やった」と言って貴女も手術に承諾したらしいね。

それが私は「結核」で、タバコを吸わない貴女が肺がんと言われ、しかも、ちょっと予後不良の「小細胞癌」と聞いたときには運命のイタズラを嘆きました。まあ、私の場合、職業上の感染なんて格好悪いし、いただけないけどね。

そのときから私たち仲良くなったんだよね。
結核は、今はいい薬があるから二週間ほどでみんな退院して行く時代だからね。風邪みたいなものってみんな言っていたよ。本当にそう、、  

4ヶ月休んで仕事に戻ったことは話したよね。しばらくは体の調子が戻らず本当に仕事を辞めようか何度も何度も考えたけど、貴女のことを考えたら贅沢言えなかったからね。
だから、貴女が一度は元気になって職場復帰したときは嬉しかったなあ。なんか、性格も男っぽくて、はっきりしていて、飲むのが好きでね、似たもの同士だったから、これからいろんなとこに旅行して、痛い目をしたぶん二人で取り戻さなくちゃあと思っていたのに。

咳がひどくて衰弱して、食事も受け付けないって聞いて貴女の好きなビールを持ってお見舞い
に行ったよね。覚えているかなあ、「美味しい」って言いながら、病室で2人で飲んだよね

それからも、どうも芳しくないと聞いて、あれが最後になってしまったけど、全国民宿マップという本を持って病室に行ったときは「元気になって温泉めぐりするよ」と言うと確かに貴女は頷いたよ。
それから数日後だった。
やっと楽になったんだと思ったけど寂しいものだよ。

お葬式に行ったとき、貴女がいつも気にかけていた娘さんがひどく泣いていたよ、お嫁に行くまで見届けたかったんでしょう?さすがに私にも娘がいるからね、娘さんのあの泣きじゃくっている姿を見たときは、結婚もそうだけど、娘のお産の時は傍についてやらなくてはと、つくづく思いましたよ。

私も最近仕事も辞めてね、ほら、貴女の同僚のMさんや、Sさん、Yさんも無事定年退職したから、たまに食事して、カラオケ行って夜中まで遊んでね、楽しんでいます。

必ず貴女の話が出るのよ、「徳さん退屈していないのかなあ、全然お呼びがかからないけど」とね。「あの人は何処へいっても楽しんでいると思う、きっと忙しくしてるんじゃないの?」なんてね、そうなの?じゃあ、もうしばらくは呼んだりしないでね、私ももう少し、したいことがあるから・・。 

元気でね、また手紙書くね  (2004、7、9)

# by taizann | 2005-03-09 11:02 | エッセー