(続)FT革命が人類を救う   

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写真 阪田かずを氏 写真集
 我々は古代より、微生物に取り囲まれて生きてきました。人間の体には一兆億個の微生物がいるのです。わきの下の切手一枚分のなかには二百万個の微生物がいます。
そのミクロの微生物に守られ、その微生物がなかったら生きていけないと言っても決して過言ではありません。 

 「発酵技術が人類を救う」、その発酵とはどのようなものでしょうか。一口に言うと微生物が人間にとって有益に働く現象なのです。その逆は、有害に働く、腐敗、罹病があります。
発酵と腐敗は微生物の良く似た現象ですが、腐敗は食べ物が腐ることで牛乳や肉を放置して置くと大腸菌やサスモネラ菌などに汚染され、腐敗菌の毒性物質が発生し、それを食べると中毒症状が起こり、人に有害なことで、発酵とは言いません。
ところが、牛乳の中に発酵菌の乳酸菌を入れ、数日間放置しておくとヨーグルトやチーズになり美味しい栄養食品になります。これが発酵と呼ばれるものです。これら発酵菌には、納豆菌、乳酸菌、有用な酵母、麹菌などがあります。

 では発酵技術は、人類に課せられた問題の解決にどう利用すると言うのでしょう。

 環境問題では、すでに微生物が排水を浄化し、川や海は美しさを取り戻しています。
しかし、生ゴミの処理は、現在各市町村で実施されている焼却方法では、問題は大きくなるばかりです。発想の転換から「生ゴミは宝だ」「生ゴミは資源だ」との考え方がFT革命です。
生ゴミのリサイクル、すなわち焼却するのではなく、土に戻し、発酵させ、肥沃な土を作り、農業に活かす、環境を破壊せず、いい作物を育てるという従来よりも安全で安値な方法なのです。  作物のまわりや土の上に、堆肥を置いたりまいたりすると言う有機農業の誤解を解く必要もありそうです。これまで何十年も間、化学肥料や農薬に痛んだ土地は少しの堆肥をまいても効果はなく、土を30~40cm深く掘りそっくり、堆肥と入れ替えるのです。
こうすることにより作物は根毛が繁り、堆肥中の栄養成分、ミネラルを吸収し作物本来の旨みが出るのです。この生ゴミを資源として利用する、地域経済循環システムはリサイクルとしていくつかの自治体が採用し成果を発揮しています。

 健康問題では、微生物の持つ拮抗作用(細菌は共存が出来ない一つだけが生き残る現象)を利用し、抗生物質が生まれましたが、ペニシリンの発見以来、現在までに四千種以上の抗生物質が発見され、そのうちの百種類が発酵生産され実用化されています。微生物の作る薬は、抗ガン剤、抗ウイルス剤など、また健康食品、発酵食品の分野でも益々注目されています。

 食糧問題の解決には、微生物を食べることです。あんな小さな目に見えないものを? 実はキノコなのです。キノコの本体は胞子という微生物なのです。椎茸、サルノコシカケ、アガリクス、メシマコブなどの抗ガン作用も注目され、菌体そのものの蛋白質の研究もされています。地面に落ちている枯葉からも人間に必須のブドウ糖の抽出も微生物が関わり、今、研究が進められています。

 さて、エネルギー問題は、微生物は発酵によって爆発力の強い物質まで作るエネルギーを持っています。
グリセリンは、微生物で発酵生産する方法が戦争とともに発展し、ダイナマイト用に殺戮に使われたことは皮肉なことでした。しかし、発酵燃料生産の研究は、炭化水素を出す菌のDNAを取り出し、これを細菌や酵母に組み込み石油類似物質の生産も夢ではないところまで来ています。

 如何でしたでしょうか。発酵技術の力は偉大だと思いませんか。

                                                      参考:FT革命{発酵技術が人類を救う} 小泉 武夫著

by taizann | 2005-06-03 11:16 | エッセー

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