秋の旅(二)   

日本一と言われる百日紅の木(瑠璃光寺)
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飛行機のトラブルで、かなり遅れて大分空港に着いた我々を、タクシーの運転手さんは、「いきなり大変な目に遭われましたなあ」と、待っていてくれていた。
今日の国東半島はどうやら一日雨らしい、足元が悪い時のタクシーのチャーターは、本当に助かる。国東にはこんなに名所旧跡があるんだと感心するくらい、午前中に瑠璃光寺、両子(ふたご)寺、富貴寺、真木大堂と案内してくれた、「仏の里、国東」らしくお寺が多い。 秋の旅(二)_c0072993_15263385.jpg
中でも印象に残ったのは、瑠璃光寺の住職のお説教だ、今様の子育てについて「哺乳瓶をせっせと消毒しているが、ハイハイを始めた子供が台所のゴキブリの卵を食べているとか、オムツを使わないから、親は子供のウンチを見ていない、」とか、面白く笑いながら、なるほどと思わせてくれる。
↓(三十三観音)
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明和六年作(西暦何年?)の地獄極楽の曼荼羅では、極楽図には、「よほど、居心地の良いところらしい、とにかく誰一人として極楽から戻ってきた人はいないんじゃから」と笑っていい、「じゃあ、地獄図は?戻って来た人がいるの?」と聞こうとしたら、「いましめじゃよ、地獄絵図は教育じゃ」と言ってのけた。久しぶりにいい説教を聞いたように思う。
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真木大堂の馬にまたがるめずらしい不動明王を見て、近くの食堂で名物の「だんご汁」で昼食をとり、一休み。
午後からは「坂道の城下町、杵築(きつき)の町を雨のため、軽く散策。 秋の旅(二)_c0072993_15451681.jpg

武家屋敷の「大原邸」を拝観、天保三年(一八三二年)から、三百五十石の家老職の御用屋敷とあり、回遊式庭園も美しく、旧状をとどめた風格のある、立派なお屋敷である。近くの中学生を何日間か、当時の体験をさせているそうだ。武家のしきたり、作法、言葉の由来など、時代劇大好きの私には、興味深い話の数々にもう一度ゆっくり尋ねてみたいと思った。 秋の旅(二)_c0072993_15491971.jpg








→(大原邸)武家屋敷のソテツはいざと言うときには食料にするためのものらしい。
かやぶきの屋根を葺き替えるのに一千万円かかるという。


次に、運転手さんは、貴船城(すべて松ノ木の丸太でできている別名松ノ木城)へ連れてくれた。別府八湯の中の鉄輪温泉郷を見渡せ、三百六十度の景観らしいが雨もひどく、残念ながら何も見えない。
驚いたのは守り神の金白龍王という、身の丈三、五メートル、重さ二十三キロの、もともとは金色が今は真っ白の大蛇が奥から取り出されたことである。蛇は大嫌いだがご利益があると言うので触ると、蛇使い(?)が「ハッ!」と大声で私の手の上から手をかざし、そして、悪いところに蛇を当てるのである。(私は、頭にしてほしいがさすがに頭に蛇を持ってこられるのはどうも気持ちが悪いので、膝にした)一瞬身じろぐが、さっきまで温泉にでも浸かっていたものか、生暖かい。おとなしいと言うよりかなりの老蛇ではないだろうか。そして、その蛇の鱗を、金運、開運、長命のお守りとして五百円で売っていた。


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雨の日の日没は早い、あたりも薄暗くなり、別府の血の池地獄を見て、焼酎の銘柄の揃ったお店でお土産を買い、いよいよ、期待の「華やぎの宿、山のホテル夢想園」に着いたのであった。
 「離れをご用意してございます」と案内され、一同感嘆の声をあげた。「広い、我が家の全部より広い」「こんなとこ始めてや」離れとは、広い部屋が全部で四屋もあり、内風呂も温泉が沸き、コーヒも自由にドリップして飲み放題であり、JTBが予約してほしいと言った時「無理だと思いますが」と言っていた訳がわかった。調子が悪いと言う一人と私は残り、みんな露天風呂へ行った。「どうも、のどが痛いし、風邪を引いたみたい」と横になり、夕飯を待った。部屋で素晴らしい料理に大分の焼酎を飲み大満足の夜であった。 秋の旅(二)_c0072993_15592082.jpg
←(夢想園の離れにて) 少々怖い感じだが、なかなか愉快な友なり





 普通はこれでみんなで夜遅くまでしゃべり、朝はゆっくりとタクシーの迎えを頼むと言うのが、いつものパターンである。
 が、食事の途中から、調子の優れぬ彼女が「風邪をうつすと悪いから離れている向こうの部屋で先に休む」と行ってしまった。
しばらくして「薬を飲む」と出てきたが、ガタガタと震えている、急須を持つ手の震えにみんなびっくり、「ただ事じゃないよ」「救急車を呼ぼう」と言うと「救急車には絶対乗らない」と言う、(彼女は消防署に勤務)「じゃあ、フロントでタクシーを呼んでもらう」とお酒の入っていない二人が付き添い玄関に向うが、もう、支えないと一人では歩けない状態である。
付き添った一人から「近くの救急病院で点滴を受けているからしばらくかかります」とメールが入り、なんとか胸を撫で下ろしたが、コーヒーを飲みながら「何だろうね」「かなりの熱やね」「インフルエンザかなあ」と言いながら待った。「大夫楽になった」と戻って来たのは十二時を過ぎていた。
そして、明日の朝、新幹線で帰ると言い出したのである。   (続く)

by taizann | 2005-11-24 15:18 | 旅行記

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